泌尿器科このページを印刷する - 泌尿器科

泌尿器科

(1)対象としている部位(疾患名)と腫瘍の特徴

 泌尿器科で取り扱う悪性腫瘍には腎癌・腎盂尿管癌・膀胱癌・前立腺癌・精巣癌・陰茎癌等があります。治療には手術・抗がん剤治療・放射線治療・免疫療法・ホルモン療法等がありますが、正確な質的診断・進行期診断をもとに適切な治療方法について検討し、治療方針を決定しています。

 

(2)当院の診療の特徴

 本院は日本泌尿器科学会から泌尿器科専門医教育施設基幹教育施設に認定され、現在、医師数3名体制で診療にあたっています。
 外来診療では、尿路(腎・尿管・膀胱・尿道)および男性性器(前立腺・精巣・精巣上体・陰茎)疾患全般を対象とし、特に尿路性器に発生した悪性腫瘍の診断と治療を中心に、排尿障害(前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿失禁など)、尿路性器感染症(膀胱炎、腎盂腎炎、尿道炎など)、急性・慢性腎不全、尿路結石症、尿潜血などの診断と治療を行っています。
 また、鹿児島大学泌尿器科を含めた県内各地の泌尿器科診療所・病院と連携を取り、協力体制を整えています。
 入院診療では、腎臓、膀胱、前立腺疾患、および尿路性器疾患に対する内視鏡手術、開腹手術、腹腔鏡手術を中心とし、当院での検査・治療を要する維持透析患者さまや、院内で発生した急性腎不全患者さまに対する血液透析療法等を腎臓内科と協力して行っています。
 心疾患や脳血管疾患の合併症を有する方の診療が多いのが当院の特徴ですが各専門領域と連携して治療にあたっています。

 

(3)症例数と治療法(年次)

実績

 

2015~2018年度 手術統計

 

(4)最近のトピックス

 近年、腹腔鏡下手術を導入し、平成28年6月から前立腺癌に対して腹腔鏡下前立腺全摘除術を、平成29年8月からは膀胱癌に対して腹腔鏡下膀胱全摘術を開始しております。出血量の減少、術後疼痛の軽減や全身状態の回復改善につながっております。

 

膀胱癌の最新の治療Ⅰ~経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術(TURBO)

 表在性の膀胱癌に対する標準的治療法は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)です。しかし、TURBTは癌組織そのものを細かく切除する方法であり、病理診断、特に筋層浸潤の有無や完全切除の判定が困難であるという問題点があります。当院ではこれらの欠点を克服する目的で、平成25年頃より膀胱腫瘍に対し可能な限り経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術(TURBO : Transurethral Resection of Bladder Tumor in One-piece、ターボ)を行っています。TURBOでは、がんを一塊として切除し、病理診断で、深さや広がりの診断が正確に行うことができます(図1:2018鹿児島市医報,第57巻第9号p.17より引用)。

図1 術中所見と病理標本。A: 膀胱右側壁に乳頭状の腫瘍を認める。B: 腫瘍の周りを切開しているところ。C: 切除後の所見。D: 摘出標本。右が腫瘍測・膀胱粘膜測。左の粘膜下層に筋層を認める。
【TURBOに関する千代丸医長の講演・執筆活動】
平成29年12月17日 第135回日本泌尿器科学鹿児島地方会 鹿児島医療センターにおける経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術(en-bloc TUR)についての検討
平成30年 鹿児島医療センターにおける経尿道的膀胱腫瘍一塊切除術(en-bloc TUR)についての検討、千代丸剛、上野貴大、日高英雄、恒吉研吾、鹿児島市医報、第57巻第9号、2018、16-18

膀胱癌の最新の治療Ⅱ~5-アミノレブリン酸(ALA)による光力学診断(アラグリオ)

表在性の膀胱癌は初期治療としてTURBTが行われます。しかし、再発することが多く、再発を繰り返すうちに浸潤性の膀胱癌に進行することがあります。TURBTにおいて、残存腫瘍なく切除することが大切です。アラグリオを用いた光線力学診断は癌細胞の部分だけが光って見えます。この方法の利点は、肉眼では判別しづらい癌組織の部分も的確に摘出することができるため、取り残しが少なく再発や転移のリスクが抑えられるところです。平成29年9月に承認され、当院でも平成30年5月から使用を開始しております。
【アラグリオの作用機序】
生物界に広く存在するアミノレブリン酸(5-ALA)は、正常細胞内においてプロトポルフィリンⅨ(PPⅨ)を経て、ヘムに変換されます。悪性腫瘍細胞では、正常細胞に比べてPPⅨが細胞内に多く蓄積されます。PPⅨは青色光線(400~410nm)を照射すると励起され、赤色蛍光(635nm付近)を発します。この性質を利用し、手術に先立ってアラグリオを服用すると、腫瘍細胞が赤色蛍光を発し視認性が高まります。診断精度があがり、腫瘍の取り残しも減ります(図2)。

図2 術中画像。腫瘍部は白色光で乳頭状に見え(図2A)、蛍光で発色していた(図2B)。病理結果はpTaの診断。腫瘍部周囲の白色光で異常無い部位(図2C)は、蛍光で発色していた(図2D)。生検の結果、pTisの診断。
【アラグリオの適応】
表在性膀胱癌に対するTURBTを行う患者さまが適応になります。炎症部位では偽陽性を生じることがあり、治療に向かない方もいらっしゃいます。詳しくは泌尿器科の治療担当医にお尋ねください。
【アラグリオに関する学会発表】
平成30年7月7日 第136回日本泌尿器科学鹿児島地方会 光力学診断(PDD)併用経尿道的膀胱腫瘍切除の初期経験 上村康介、水間浩平、千代丸剛

前立腺癌の最新の治療~ゾーフィゴ(骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌に対するラジウム223)

前立腺癌の治療薬として最も新しいものがラジウム223(商品名ゾーフィゴ)です。ゾーフィゴは平成28年3月に、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌の治療薬として承認されました。当院では平成29年5月より治療を開始しています。前立腺癌は骨に転移しやすい癌です。月に1回静脈注射を行い、選択的に骨転移部位に取り込まれ治療効果を発揮します。
【ゾーフィゴの作用機序】
ゾーフィゴは、アルファ線と呼ばれる放射線を出す「ラジウム223」という放射性物質です。このゾーフィゴには、カルシウムと同様の骨に集まりやすい性質があり、骨代謝の亢進した癌の骨転移巣に集積します。そこから放出されるアルファ線が、癌細胞の増殖を抑えます。
【ゾーフィゴの適応と治療効果】
ゾーフィゴの適応は、骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌です。去勢抵抗性前立腺がんとは、ホルモン療法が効かなくなった状態の前立腺癌です。骨髄機能が低下した方や、内臓転移のある方は適応から外れる場合があります。詳しくは泌尿器科の治療担当医にお尋ねください。臨床試験において、ゾーフィゴはプラセボ(生理食塩水)と比較して、全生存期間の延長を認めました。また、症候性骨関連事象発現までの期間の延長も認めました。[症候性去勢抵抗性前立腺癌患者を対象とした国外第Ⅲ相臨床試験]
【ゾーフィゴの副作用】
5%以上の方に、悪心・嘔吐・下痢といった消化器症状や、疲労、骨痛などの症状があらわれる場合があります。投与を中止することによりほとんどの方が改善します。
【ゾーフィゴに関する千代丸医長の講演・執筆活動】
平成31年4月25日 北薩ゾーフィゴセミナー(川内市) 「CRPC骨転移に対するゾーフィゴの臨床的有用性」
平成31年4月20日 第107回日本泌尿器科学会総会(名古屋) 一般ポスター・前立腺腫瘍・放射線治療③ 鹿児島医療センターにおける塩化ラジウム-223の治療経験とDWIBSによる治療評価
平成30年12月16日 第137回日本泌尿器科学鹿児島地方会 骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌に対する塩化ラジウム-223(ゾーフィゴ)の初期治療経験

(5)免疫チェックポイント阻害剤について

腎癌

平成30年のノーベル生理学・医学賞に、ニボルマブ(商品名オプジーボ)を発明した京都大学の本庶佑先生が選ばれました。本庶先生は、平成29年4月に鹿児島で開催された日本泌尿器科学会総会に参加していただき、「がんを免疫力で治す」という題名でオプジーボの開発に関するご講演をしていただきました。
平成28年8月に転移性腎細胞癌に対し免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブが泌尿器科の癌において初めて承認されました。当院では鹿児島県内で最も早く10月より転移性腎細胞癌の患者に対してニボルマブ治療を開始しています。他施設からの紹介もあり、平成28年度は県内で最も使用症例数が多い施設となっております。
令和元年5月、日本泌尿器科学会により腎癌診療ガイドラインが改訂されました。これまで中/高リスクの進行腎癌に対する1次治療は分子標的治療薬が推奨されていました。今回の改定で免疫チェックポイント阻害剤であるイピリムマブ+ニボルマブ併用療法が推奨されることになりました。当院でも平成30年10月からイピリムマブ+ニボルマブ併用療法を行っています。(※イピリムマブ+ニボルマブ併用療法は平成30年8月に適応承認されています)。

膀胱癌、腎盂・尿管癌(尿路上皮癌)

膀胱癌や腎盂・尿管癌といった尿路上皮癌に対しても免疫チェックポイント阻害剤が有効な場合があります。平成29年12月に「がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん」に対しペンブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が適応承認されました。当院でも平成30年8月からペンブロリズマブ治療を開始しています。

前立腺癌

これまで前立腺癌は免疫チェックポイント阻害剤が効きにくいとされ、使用できませんでした。平成30年12月に「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対しペンブロリズマブが適応承認されました。前立腺癌でも、ある種の遺伝子変化(MSI-High)を認めれば免疫チェックポイント阻害剤に効果を示す可能性があります(※MSI-Highを調べるためには病理組織検体が必要です)。
 
【ニボルマブの作用機序】
ニボルマブは、癌による免疫抑制を解除することで、人が本来持つ免疫活性を回復・活性化させ、腫瘍増殖を抑制する、これまでの治療とは全く異なる作用機序をもった薬剤です。
【ニボルマブの適応と治療効果】(腎癌について)
ニボルマブの適応は、根治切除不能または転移性の腎細胞癌です。患者様の状態により適応が若干異なりますので、詳細は泌尿器科の治療担当医にお尋ねください。臨床試験において25%の方に治療効果があったと報告されております。
【免疫関連有害事象(irAE)とその対策】
ニボルマブは患者様自身の免疫に作用するお薬ですので、免疫関連有害事象(irAE)といった副作用が出ることがあります。当院は多くの診療科があり、irAEに即座に対応するためのクリティカルパスや救急対応マニュアルを作成し、他科の先生方と緊密に連携して合併症対策・管理を行っています。鹿児島がん免疫療法サポートネットワークKISNet(Kagoshima Immunotherapy Support Network)を設立し、定期的にirAEに対する勉強会を病院内外で開催しております。
【ニボルマブや腎細胞癌に関する千代丸医長の講演・執筆活動】
平成30年9月1日 第30回服薬指導セミナーin Kagoshima (鹿児島市勤労者交流センター第1会議室) 腎がんと薬物療法
平成30年8月17日 RCC immune conference in Miyakonojo (都城医療センター) 鹿児島医療センターにおけるNivolumabの使用経験とirAE対策
平成30年4月20日 第106回日本泌尿器科学会総会(京都) 一般口演・腎腫瘍・薬物療法① 当院におけるニボルマブの初期使用経験
平成30年2月16日 Kagoshima Immunotherapy Support Network (KISNet) 錦江湾ベイサイドカンファレンス(ドルフィンポート1Fドルフィンホール) Session 2 パネルディスカッション【実際に経験したirAEとその対応】◎内分泌疾患「1型糖尿病」
平成30年1月16日発行 Year Book of RCC 2017 p.15-18 メディカルビュー社、抗PD-1交代の使用例で重篤なirAEとして劇症1型糖尿病を発症した症例の提示
平成29年6月29日 鹿児島腎細胞がんI-OカンファレンスCase report & Discussion講師 当院におけるオプジーボの使用経験について
平成28年12月18日 第133回日本泌尿器科学会鹿児島地方会 当院における転移性腎細胞癌に対するニボルマブの初期使用経験