大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術治療についてこのページを印刷する - 大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術治療について

ステントグラフト内挿術は、ステントというバネを取り付けた特殊な人工血管を太ももの付け根の血管よりカテーテルを通して挿入、患部で拡張固定をします。これにより動脈瘤の部分に血液が流れないようにし、破裂の危険性を無くす治療法です。外科手術と比べてメスで切開する部分が少なく、低侵襲であるため術後早期の回復が期待できます。

 

 

 加齢や動脈硬化等によって動脈壁の一部が弱くなると、大動脈が膨らみ始め、瘤が発生します。胸部にできたものを胸部大動脈瘤、腹部にできたものを腹部大動脈瘤と言います。高齢化社会と比例し、年々大動脈瘤を発症する患者数は増え続けています。

 胸部・腹部大動脈瘤を治療する方法として、開腹・開胸手術による人工血管置換術が一般的でしたが、ステントグラフト内挿術という比較的新しい治療方法が確立されてきています。ステントグラフト内挿術は、ステントというバネを取り付けた特殊な人工血管を太ももの付け根の血管よりカテーテルを通して挿入、患部で拡張固定をします。
これにより動脈瘤の部分に血液が流れないようにし、破裂の危険性を無くす治療法です。外科手術と比べてメスで切開する部分が少なく、低侵襲であるため術後早期の回復が期待できます。大動脈の形状により解剖学的にステントグラフトデバイスが適応不可である場合もありますが、ご高齢であることや合併症等の理由で開腹外科手術が困難であった方などに有効な治療法として、広く普及しております。

 1991年にアルゼンチンでJ.Parodiにより腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の成功例が報告され、2006年には国内最初の保険認可グラフトである腹部大動脈用のステントグラフトが導入されました。

 当院では2009年より腹部ステントグラフト内挿術(endovascular aortic aneurysm repair:EVAR) を開始、2013年より胸部ステントグラフト内挿術(Thoracic endovascular aortic aneurysm repair:TEVAR)を開始しております。

 これまで当院では心臓血管外科、循環器内科合わせて2016年末現在でEVAR 66例、TEVAR 43例治療を行っており、良好な成績を収めております。さらに2016年の年間症例数はEVAR 20例、TEVAR 18例と、年々症例数も増加しております。

 治療後は定期的なCT検査を行い、永続的なフォローを行っていきます。新しい治療法であるため長期成績については現在観察中ですが、当院で治療された多くの患者さまが現在も良好な経過で過ごされております。