独立行政法人 国立病院機構 鹿児島医療センター

より生理的なペーシングを目指したヒス束エリア・左脚エリアペーシングを始めました

 高度の徐脈性不整脈(洞機能不全症候群、房室ブロックなど)に対しては恒久的ペースメーカ植込みがなされています。ペースメーカのリード植込み部位は、安定した固定が得られることより長年、心房は右心耳、心室は右心室心尖部が主流でした。最近、心房は右心耳以外、心室は右室心尖部以外の部位が選ばれるようになってきました。
 右心室心尖部ペーシングは、医原性左脚ブロックによる左室非同期性収縮を誘発し、QRS幅が広くなり、心房細動や心不全が増加すると報告されています。特にペーシング率が高い場合は、収縮機能不全を来すため、右室ペーシング誘発性心筋症を招き、心不全と死亡率の増加につながりやすくなります。


 その代替ペーシング部位として、右室心尖部より心室中隔や右室流出路をペーシングしたほうが、左室収縮はより生理的収縮に近づきます。また、不必要な右室ペーシングを最小限にする工夫がなされてきました。当院では、心室中隔ペーシングを積極的に選択していますが、欧米ではヒス束ペーシングを行う施設が徐々に増えてきています。


 ペーシング部位は、ヒス束、心室中隔、右室流出路、右室心尖部の順に心室収縮の同期性は高くなりますが、その順でリードの安定性は低下します。スクリューインリードでヒス束をペーシングする方法がありますが、これまでの問題点として、植込みの不成功、高いペーシング閾値(消費電力が高くなるため電池寿命が短くなる)、低い心内心室波高,心房波オーバーセンシング(誤作動の原因)、房室伝導障害の誘発などがありました。

 最近、ヒス束にデリバリーする専用のシースやリードの発達により、ヒス束ペーシングが施行されるようになりました。

 

ヒス束ペーシング植込み時(RAO30度)

 ヒス束ペーシングは、心房から心室への唯一の伝導路の一部であるヒス束を直接ペーシングすることで、生来使用してきた心室への伝導路をそのまま利用し、両心室の元来の動きを再現することが可能です。ヒス束ペーシングは、右心室ペーシングに比べて、死亡、心不全による入院、両心室ペーシングへのアップグレードを有意に減少させたと報告されています。

 完全左脚ブロックでは、うまく良好な部位に植込まれた症例は、ヒス束エリア・左脚エリアペーシングにより、より狭いQRS幅が得られ、心機能低下を予防することが期待されています。徐脈性不整脈、ペーシングによる心機能低下例、完全左脚ブロック、また,両心室ペーシングが不成功の場合、オプションとして、今後、ヒス束エリア・左脚エリアペーシングが期待されると思われます。

 当院では、より生理的なペーシングを目指したヒス束エリア・左脚エリアペーシングを2019年9月より開始しています。

 

ヒス束エリアペーシング植込み直後

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