独立行政法人 国立病院機構 鹿児島医療センター

2022年1月13日 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)400例

 大動脈弁狭窄症は、弁膜症の中では最も多く、進行すると命に係わる病気です。
 見過ごされがちですが、60~74歳で2.8%、75歳以上の方では13.1%の潜在患者さまがいると言われております。その中で治療を必要とする重症の大動脈弁狭窄症は70歳未満では1%未満ですが、80歳以上になりますと、7%程度の頻度と言われています。

 根本的治療は固く・狭くなった大動脈弁を置き換えるしかありません。大きな手術になるため、開胸手術を受けられない患者さまもいらっしゃいます。そのような方のために胸を開かずに大動脈弁を置き換える治療、より体への負担が軽い経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)が始められました。

 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)は2013年に日本で保険診療が開始されました。遅れること4年、2017年6月に当院が鹿児島県で最初の症例を施行させて頂きました。以前は県外へ紹介せざるを得なかった患者さまを鹿児島でどうにかできないものかと県外に研修させて頂き、勉強したのが6年前になります。
 開始当初、不安を抱えながらも、多職種のスタッフの協力のもと、日々新しい知識・技術を習得するよう努力し、開始から4年を経た今では年間100症例以上、九州では2番目の症例数までになりました。そして、2022年1月13日無事400症例を実施できました。

 ひとえにハートチームとして、循環器内科医師、心臓外科医師、麻酔科医師、看護師、放射線技師、臨床検査技師、臨床工学士、理学療法士、医療クラークなど個々の力と団結力によるものと感謝しております。

 4年間での大きな分岐として2020年に弁膜症ガイドラインが改訂されました。以前は開胸できない患者さまのみTAVI適応でしたが、改訂後は、より低リスクの方へもTAVI適応が拡大されました。
基本的には75歳未満の方は開胸手術、80歳以上の方はTAVI、75-80歳の方は患者さまの背景・希望を考慮しての治療選択と文言されています。

 

自己拡張型カテーテル弁(画像提供:日本メドトロニック株式会社)


 低侵襲治療は日々進歩しており、以前手術された人工弁(生体弁に限ります)劣化された方へも条件を満たせばTAVI可能となります。また、以前は保険適応外でありました透析患者さまの大動脈弁狭窄症へのTAVI施行が2021年からは保険適応となりました。近く当院でも施行可能となる予定です。大動脈弁狭窄症だけではなく、僧帽弁閉鎖不全症の方へのカテーテル治療も施行にむけて準備中です。

 日々医療は進歩し、より低侵襲・安全性が求められ、それを実行していく事が私たちの使命であります。一方で、実際にTAVIを受けられる患者さまの不安の声も聞かれます。
 御家族の方々の不安もあるかと思います。患者さま、御家族さまにとって初めての手術、新しい治療であり当然不安はあることです。大動脈弁狭窄症について、TAVIについて、御理解頂けるよう十分に時間をかけて説明させて頂き、患者さま・御家族さまに寄り添い、安心してTAVIを受けて頂けるようハートチームとして邁進し、実績を積み上げる事がとても大切なことだと思います。
 そしてTAVIを受けられた後も、不安が残らないよう患者さま・御家族さまとの連携も不可欠です。 

 今後も患者さま、御家族さまと共に、大動脈弁狭窄について真摯に向き合い信頼あるハートチームとして努力を惜しまない所存です。

 最後になりますが、今後も患者さま、御家族さまの大切な時間を健康で過ごせるよう、当院ハートチームとして努力を続けてまいります。また、御協力頂いている医療機関の皆様に感謝申し上げます。

文責:第二循環器内科医長 平峯 聖久

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