独立行政法人 国立病院機構 鹿児島医療センター

「鹿医セン便り Vol.187」

2021年11月1日(月)

当院での心不全カンファ、ACPの取り組みについて

 

 今回は、当院の心不全に対しての取り組みの一つであるカンファについて紹介させていただきます。

 高齢化社会に伴い、心不全の患者さまは増加傾向にあり心不全パンデミック(心不全の大流行)という言葉もいわれています。日本でも約120万人の心不全患者さまがいると推定され、日本循環器学会、日本心不全学会からは2017年に、『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。』という心不全の定義を発表しています。そして、作成の経緯として、循環器疾患の死亡数が多いこと、心不全の予後も決して良いものではないにもかかわらずその事実や心不全の怖さ(完治しないことなど)があまり知られていない状況についても触れられています。 確かに悪性腫瘍などと比べ、『心不全』が命にかかわるという認識は広く一般には浸透していないと感じることは多いと思われます。

 循環器学会からは各種ガイドラインが発表され公開されていますが、心不全についてもガイドラインがあります。その中には心不全のstage分類もあり、stageごとの管理や治療が提唱されています。そして、私たちが通常診療にあたる入院患者さまは有症状の心不全であり心不全stageCとなります。Stage分類はA~DでなされておりstageCは一番状態の悪いstageD(治療抵抗性の難治性心不全)の一歩手前の段階であり、症状を増悪させないことがより重要になってきています。また、心不全診療の柱として疾病管理、運動療法とともに緩和ケアが挙げられており、緩和ケアにも関係する意思決定支援としてのadvance care planning(ACP, 人生会議)も循環器領域でも重要視されるようになっています。

 前置きが長くなりましたが、治療の多様化や循環器領域での緩和ケアやACPの実践の必要性など多業種での取り組みが重要となっているなか、当院の循環器入院の中心となっている7階病棟で週一回の心不全カンファレンスを行っています。毎週水曜日の1430分から30分程度、基本的に入院患者さま1例について、問題点の共有や今後の方針について、循環器内科医師、病棟看護師を中心に地域連携、外来看護師、PT/OT等の多職種で検討を行ったり、病棟にむけてのミニレクチャーを行ったりしています。また、再入院予防のための心不全指導やACPへの取り組みを外来でも継続的に行えるよう外来との連携をとることも少しずつ行っています。

 また、心不全療養指導士の制度が今年から始まり、全国で1771人、鹿児島県でも23人の心不全療養指導士が誕生しており、当院でも2(看護師2)が資格取得しました。心不全療養指導士の特徴としては、看護師だけでなく薬剤師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、臨床検査技師その他の多業種が取得可能となっており、今後の心不全治療における大きな役割を担っていくことが期待されています。興味のあるコメディカルの方がいらっしゃいましたら、ぜひ資格取得をご検討いただければと思います。多業種によるチーム医療を行うことで、より円滑な心不全診療を行っていくことを期待しています。

 昨今の心不全治療を取り巻く治療の変化は目覚ましく、今年に入り心臓移植を前提としない、いわゆるDestination therapy(DT)としての植込み型補助人工心臓の使用が保険適応となりました。心臓移植については、鹿児島県内で行える施設はない状態ですが、移植を必要とする患者さまや可能性のある患者さまはおり、移植可能施設との連携なども重要となっています。その他、当院でも施行している経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)などをはじめとする低侵襲な治療もひろがりを見せ治療の選択肢はひろがっています。

 多様化する心不全診療の中で、心不全治療のみならずより充実した人生を送っていただくための一助として心不全カンファレンスが活用できればと考えています。微力ではありますが、地域に貢献出来るよう努力していきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

 (文責 循環器内科医師 馬場 善政)

 

 

                    

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