独立行政法人 国立病院機構 鹿児島医療センター

「鹿医セン便り Vol.188」

2021年12月1日(水)

心房細動アブレーション ーレーザーバルーンの導入ー

 

 現在、3種類のバルーンが認可されています。これまで、当院でもホットバルーン、クライオバルーンを使用してきましたが、この度レーザーバルーンを導入いたしました。

 それぞれの手技の特徴と利点を考慮したうえで、より適した肺静脈隔離できる選択肢がもう一つ増えることとなりました。

  

 心房細動は最も多い不整脈の一つで、脳梗塞などの血栓塞栓症や心不全を誘発する原因となっています。最近では、心房細動により、腎機能低下、認知機能低下が誘発されることが認識されるようになり、また、より心機能の不良症例に対しアブレーションを施行することで、心不全入院を減らし、通常の心機能の症例でも早期に介入したほうが予後もいいとの報告もあり、より早期に、より積極的にアブレーションが行われるようになりました。

 心房細動は、上室期外収縮が発生の契機となります。その契機となる上室期外収縮を抑えることで心房細動発生を抑える治療です。上室期外収縮の多くは肺静脈の中から出現することがわかってきたため、肺静脈の入口部を焼灼することで電気的に隔離する方法が考案され、安定した成績を得られるようになりました。2000年ころから始まり、現在では全カテーテルアブレーション症例の約7割が心房細動対象症例となっています。

 カテーテルアブレーションで肺静脈を隔離する手段は、カテーテル電極の先端に高周波を流し、抵抗熱を利用し焼灼する方法です。1回の焼灼は約20-30秒で、約3-4mmの範囲です。肺静脈の周囲を焼灼するには、2050回の焼灼が必要で、技術的にも難しい手技になります。そのため、もっと短時間で、簡単に治療が進まないかと開発されたのが、バルーンによる肺静脈隔離術です。

 肺静脈の入り口でバルーンを膨らませ、入口部で1本の血管を塞ぎ、一気に電気的に隔離をしてしまう方法です。現在、3種類のバルーンが認可されています。これまで、当院でもホットバルーン、クライオバルーンを使用してきましたが、この度レーザーバルーンを導入いたしました。

①ホットバルーンは、バルーン内の液体を高周波で熱することで隔離する方法

②クライオバルーンは冷凍のガスを入れて冷却することで隔離する方法

③今回導入するレーザーバルーンは、レーザーを当てて、レーザーのエネルギーを組織内の水分、ヘモグロビンが吸収し熱を発生させ電気的に隔離する方法

 それぞれ特徴はありますが、レーザーバルーンはバルーン内に挿入した内視鏡で直接焼灼部位を見ながら治療をすることができます。また、基本的には造影剤の使用の必要はなく、焼灼部位の内膜損傷が少なく、焼灼した部位の再伝導が少ないという特徴があります。

 患者さんの病歴、治療する肺静脈の形態、併せ持つ不整脈を考慮し、最適な方法を選んで、治療効果を上げていきます。  

 

(文責:不整脈治療科部長 塗木 徳人)

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