独立行政法人 国立病院機構 鹿児島医療センター

お知らせ

令和元年5月9日に経カテーテル大動脈弁置換術100例を迎えました

2019年5月20日(月) お知らせ医療関係...
心臓弁膜症の患者さまは年々増加しています。そのうち最も多いものが大動脈弁狭窄症で、加齢により動脈硬化が進行すると、弁そのものの変形や石灰化により大動脈弁の狭窄が進行する病気です。そして息切れ、胸痛、失神発作等の症状が出現した場合や、心不全のため入院した時点で手術の適応となります。経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI: transcatheter aortic valve implantation)は、そのような重症大動脈弁狭窄症の患者さまに対して、カテーテルを使って心臓に弁を留置する新しい治療法です。

ここ鹿児島医療センターでは2017年6月27日鹿児島県で初のTAVIをおこなうことができ、今年2019年5月9日に100例目そして101例目の患者さまの治療を無事に終えることができました。

従来の開心術による外科的人工弁置換術(SAVR: surgical aortic valve replacement)は安定した治療で、今でも第一選択ではありますが、高齢者や多くの合併症を有する体力に自信のない、丈夫でない患者さまには、SAVRの危険性が高く、もしくは不可能と判断された場合に、TAVIが非常によい適応となります。

TAVIが日本に導入されたのは2013年で、その当時はTAVIの適応は、非常に高齢(おおむね85歳以上)である、肺や肝臓の病気の合併がある、以前に心臓外科手術を受けたことがある、胸部への放射線治療を受けたことがある、予後が1年以上と考えられる悪性腫瘍の合併がある、脆弱である(寝たきりであるなど、高度に衰弱している場合にはTAVIも不適となります)患者さまが対象でありました。 
近年、デバイスの改良や経験の蓄積などによりTAVIの成績はかなり良好なものとなっています。TAVIの治療成績の改善に伴い、手術の危険性が高い患者さま~危険性が中間である患者さまに、そして危険性の低い患者さまにまでTAVIの適応が拡大されつつあります。

TAVIを行う上で最も重要となるのは、適応を含めた術前評価です。造影CT検査、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査等で心臓・血管の状態、脳血管の状態、歯ならびに口腔の衛生状態をふくめ全身状態の評価を行い、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、看護師、放射線技師、臨床検査技師、臨床工学士、理学療法士等の多職種からなるハートチームでカンファレンスを行い、TAVIの適応および治療方針を決定します。その術前評価そのものがTAVIの成功を一番左右するものであることは疑いがありません。当院ではTAVIを実際行う前に約1~2週間の検査入院をおこなっております。

治療においては、体への負担を考え、足の血管からの治療(大腿動脈アプローチ)が第一選択となりますが、足の血管径が細すぎたり、狭窄があったり、蛇行が強い場合などでは胸壁からの治療(心尖部アプローチ)の適応となります。
当院では第一循環器内科、第二循環器内科、心臓血管外科の枠をこえて、ハートチームで治療にあたっております。5月9日時点で97例の患者さまが大腿動脈アプローチで、4例が心尖部アプローチで治療を実施しました。
原則として全身麻酔下に治療を行いますが、心臓を切開して人工弁を縫合する手術ではないため、心臓を止めて手術をおこなう必要がなく、人工心肺を使用しません。 TAVIに使用する人工弁は、金属の網(ステント)の中に生体弁(動物の組織から作った弁)を縫い付けたものです。
入院期間は10日から2週間です。術後3ヶ月後、6ヶ月後、12ヶ月後、24ヶ月後と定期検診をさせていただいております。
TAVIは無事に終了すれば、低侵襲で高齢者や多くの合併症を有する虚弱患者さまには大変喜ばれる治療方法でありますが、一方合併症が出現した場合は、非常に重篤な状況に陥ります。当院でも開胸手術、開心手術までいたった症例、さらに30日以内の死亡例も経験しております。

術前から大動脈弁狭窄症について、そしてTAVIを含めた手術について、できるだけ多くのことを、時間をかけて丁寧に患者さまに説明し、悩みながら治療方針を決定してきました。
今後もより安全に、より良い治療を患者さまに提供できるようハートチーム、さらに病院一丸となって努力させていただきます。
最後になりましたが、悩みながら治療をうけていただいた患者さまそして家族の皆様、そして大切な患者さまをご紹介いただいた開業医ならびに関連病院の先生方に感謝申しあげます。
 
文責:第一循環器内科部長 片岡 哲郎

独立行政法人国立病院機構鹿児島医療センター
099-223-1151 (代表)
〒892-0853
鹿児島県鹿児島市城山町8番1号
fax:099-226-9246
お問い合わせはコチラ

page top

Copyright © 2019 National Hospital Organization Kagoshima Medical Center.