循環器内科このページを印刷する - 循環器内科

循環器内科は、下記の研修施設です。

 日本循環器学会
   認定教育施設
   専門医研修施設
 日本心血管インターベンション治療学会研修施設
   研修施設群基幹施設(CVIT研修施設)
 日本不整脈心電学会研修施設
 日本高血圧学会専門医認定施設
 日本超音波学会専門医研修施設

 

当院での主な下記の治療について説明します。

 

1.経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
  1)風船治療(POBA)
  2)ステント治療
  3)ロータブレーター

2.末梢動脈インターベンション(PTA)

3.大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術治療

4.不整脈に対するカテーテルアブレーション

5.デバイス治療
  1)ペースメーカ植込み
    リードレスペースメーカ
  2)植込み型除細動器(ICD)
    皮下植込み型除細動器(S-ICD)
  3)心臓再同期療法(CRT)

6.経静脈電極抜去術(レーザーシースを用いるもの)によるリード抜去

7.経皮的カテーテル大動脈弁置換術・形成術(TAVI・BAV)

 

 

1.経皮的冠動脈インターベンション(PCI)

 心臓は拡張と収縮を繰り返し、血液を全身に運ぶポンプの役割を果たしています。心臓自体に血液を供給するための血管が心臓を包むように分布しており、これを冠(状)動脈といいます。冠動脈は大きく分けると、左右の冠動脈からなり、左冠動脈は左前下行枝と左回旋枝の2本からなります。

 

 

 上記は、冠動脈CT検査ですが、選択的に冠動脈を造影する検査が選択的冠動脈造影です。当院は、これまで3万件以上施行しております。

 

 

 冠動脈の血管が、狭くなったり(狭窄)または閉塞した場合、血管の内側から広げる(拡張する)治療が、経皮的冠動脈インターベンション、冠動脈形成術(PCI)と呼ばれています。代表的な治療として、風船(バルーン)治療とステント治療があります。

 

1)風船治療(POBA)

 冠動脈の血管の狭くなった部位をバルーン(風船)で拡張させる治療です。

 

2)ステント治療

 バルーン(風船)だけでは拡張が不十分な部位に、金属でできた支えとなるステントを留置する治療です。最近のステントには、再狭窄を抑える薬剤が塗布しており、薬剤溶出ステントと呼ばれています。

 

3)高速回転式経皮経管アテレクトミーカテーテル(ロータブレーター)

 冠動脈の石灰化が強く、バルーンが病変部を通過しない、または通過してもバルーンが拡がらない場合があります。この場合は、高速回転式経皮経管アテレクトミーカテーテル(ロータブレーター)を使用してかたい部分を高速で削ります。このロータブレーターの治療は施設限定ですが、当院は使用可能ですのでご相談ください。

 

 

 ロータブレーターは、図のように先端に細かいダイヤモンド粉末が塗りつけられた金属球を一分間に150,000回転以上で高速に回転させることにより、硬い部分を削る治療です。

 

 

 

2.末梢動脈インターベンション(PTA)

 脳動脈疾患CVD、冠動脈疾患CAD,末梢動脈疾患PADは、動脈硬化が基盤となって血栓ができ、血管が詰まるという共通の発症経過を示すことから、最近統一した疾患概念として「アテローム血栓症(ATIS)」と呼ばれています。特にPADを有する患者さまにおける心筋虚血有病率は55%にも及び、重症のPAD患者さまの生命予後は不良であるといわれています。PADに糖尿病が合併すると心血管死がさらに増加することも分かってきました。これまでシロスタゾールやスタチンなどの内服に加え、腸骨動脈領域を中心にインターペンション(PTA)をしてきましたが、大腿動脈以下のPTA治療も増えてきております。

 冠動脈と同じように、骨盤部や下肢の末梢血管の動脈硬化による狭窄・閉塞部を細いカテーテルに装着したバルーン(風船)やステント(金属の筒状のもの)を使用して、病変部を拡張させることにより血流を改善させる治療です。

 

3.大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術治療

 大動脈は、心臓から全身に血液を送る重要な血管です。加齢や動脈硬化等により血管の壁が弱くなると、大動脈が膨らみ、こぶのようになることがあります。胸部にできたものを胸部大動脈瘤、腹部にできたものを腹部大動脈瘤といいます。瘤が大きくなると、やがて破裂し、大出血から死に至る危険性があります。何らかの侵襲的治療が必要であり、外科的な人工血管置換術が主ですが、ステントグラフト内挿術に適した方もおられます。

 ステントグラフトとは、人工血管(グラフト)に針金状の金属(ステント)を縫い合わせたものであり、それを血管内からカテーテルを操作して動脈瘤の部位で広げて血管を補強する治療法です。

 


 

4.不整脈に対するカテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションとは
 脈が速くなる頻脈性不整脈の原因には、大きく2つあります。一つは、心臓の中に電気回路を持ってしまい、あるきっかけで電気回路を電気信号が回りだす(リエントリー)ために頻脈になるものと、もう一つはある一点から異常な信号が持続的に出現する(異常自動能)ために頻脈になります。


下記の図の心房頻拍(AT)の一部、房室結節回帰性頻拍(AVNRT)、副伝導路症候群(WPW)、心房粗動(AFL)、心室頻拍(VT)がリエントリーによる頻拍です。心房頻拍の一部が異常自動能にあたります。

 


カテーテルアブレーションの方法
 カテーテルアブレーション(正式名:経皮的カテーテル心筋焼灼術)は、カテーテルの先端から高周波を流すことで熱をもたせ、電気回路を遮断、もしくは異常自動能の起源を焼き切ってしまい、正常の心拍に戻す治療法です。外科的に開胸するのではなく、カテーテルと言われる、電極を数本心臓の中に挿入し治療します。
 カテーテルアブレーションは1980年に開発され、頻脈性治療に貢献してきました。その後、三次元マッピングの技術が開発発展し、より複雑な頻拍に対して治療が可能になりました。当院でも2010年4月から3次元マッピングシステムの一つであるCARTOシステムを導入し、カテーテルアブレーション治療向上を図っています。

 


 

心房細動のカテーテルアブレーション
 治療を要する不整脈で最も多い不整脈が心房細動ですが、一定の回路や持続する起源をもっているわけではないため、カテーテルアブレーションは難しいと考えられていました。
 しかし、1998年にフランスのHaissaguerre先生が、心房細動の発生は不規則で早い連続的な異常電気信号(上室性期外収縮)が契機となることを発見しました。これまでのカテーテルアブレーションは、ほとんどの頻拍の契機になる期外収縮ではなく、そのあとに頻拍を持続させる電気回路や異常自動能を治療の対象としており、契機となる期外収縮は治療の対象としていませんでした。しかし、心房細動の契機となる上室期外収縮をなくすことで、心房細動の発症を抑えられるのではないかと考え、この治療が始まりました。上室性期外収縮の多くは、肺静脈周囲及び肺静脈開口部から迷入している心筋から発生することがわかり、肺静脈を電気的に隔離し、上室性期外収縮を抑えこむことで、多くの症例が洞調律を維持することが可能となったため、世界中に心房細動に対するアブレーションが普及しました。現在は、左右肺静脈をそれぞれ上下同時に広範囲に囲むように線状焼灼する方法が一般的ですが、従来の高周波ABLでは、1回の焼灼で焼灼できる範囲は3-5mm前後であり、1周約10-20cmの肺静脈隔離は時間を要し、その習熟には多くの経験も必要としていました。
 そのため、近年、技術革新により発作性心房細動に対してバルーンテクニックが開発されました。肺静脈入口部にバルーンを押し付け、冷凍もしくは加熱する方法で一気に肺静脈を電気的に隔離する方法です。
 わが国では2014年7月より肺静脈電気的隔離術の際に第2世代のクライオバルーン(冷凍バルーン)を使用できるようになり、加熱するホットバルーンが2016年4月から保険償還され、国内で使用できるようになりました。
 従来の高周波によるカテーテルアブレーションと比較し、冷凍もしくはホットバルーンにより、1回の焼灼で1本の肺静脈の電気的隔離が可能となり、手技時間も短く、簡便となりました。
 バルーンカテーテルが適応となる患者さんは、発作性心房細動(1週間以内に心房細動が停止し正常調律に戻る)です。治療対象になる肺静脈が拡大していたり、通常の形態をしていない場合はバルーンで肺静脈を閉塞できないため治療できません。バルーンカテーテルで治療ができるかどうかは、主治医とご相談ください。
 当院でも、2016年8月1日より、ホットバルーン、2017年10月13日より、クライオバルーンによる肺静脈隔離術を開始しています。

 

カテーテルアブレーション累積件数

 

5.デバイス治療

 1)ペースメーカ植込み

  • ペースメーカは、徐脈に対する確立された治療法です。

 

 

 通常は、胸部の皮下ポケット鎖骨の下側に植込まれる電子部品および電池を内蔵したペースメーカ本体と、同部位から経静脈的に心臓までの導線(リード)からなります。リードは右心房または右心室の任意の部位に植込みペーシング治療を行います。

 そのため、橈骨皮静脈を剥離してリードを挿入するか、鎖骨下静脈穿刺にてリードを挿入していました。最近は胸郭外鎖骨下穿刺法を全症例で施行しております。

 

リードレスペースメーカ

 平成29年9月より、新しく開発されたリードレスペースメーカが使用できるようになりました。VVIRで、電池寿命も約10-14年、MRI対応のデバイスです。平成29年9月の時点で、全国22カ所で植込み可能施設が指定され、当院も指定施設となっています。まだ、適応する方が限定されていますがご相談ください。

 当院でも、リードレスペースメーカが使用できます。
 

 

 ペースメーカ等の不整脈デバイス治療の手術件数は全国で年間6万件以上が行われており、デバイス治療に関連した合併症も散見され、特に感染を合併した際にはリードを含めたすべての異物除去が必須であることは広く認知されています。リードには断線、被膜損傷、静脈閉塞や感染などの問題があり、デバイス感染の多くは皮下ポケット感染から生じております。

 今回のリードレスペースメーカは、ポケットを作成する必要がなく、リードもありません。デリバリーシステムを用いて鼠径部から大腿静脈を経由して右室心室中隔心尖部に植込むことを目的に小型化(1.0cc、1.75g)されたペースメーカシステムです。従来のペースメーカ機能である、1.5/3テスラ全身MRI対応、加速メーターペースのレートレスポンス、キャプチャマネージメントなどを有しています。

 具体的には、1)心房細動を合併した、症状のある発作性もしくは持続性の高度房室ブロックの患者、2)心房細動を合併しない、症状のある発作性もしくは持続性の高度房室ブロックで、右心房へのリード留置が困難、または有効(有用)でないと考えられる患者、3)症状のある徐脈性心房細動または洞機能不全症候群で、右心房へのリード留置が困難、または有効(有用)でないと考えられる患者、が妥当と思われます。

 まだ、適応する方が限定されていますが、ペースメーカ植込み適応患者がおられましたらご相談ください。

 

 2)植込み型除細動器(ICD)

 何の兆候もなく、元気だった人が突然亡くなってしまうことを、「突然死」、といいます。医学的には、発症から死亡までが24時間以内のものと定義されています。突然死の原因の約6割は心臓が原因ですが、その直接的な原因のほとんどは不整脈です。

 

 

 生命に危険を及ぼす不整脈を止めるには、電気的除細動で止めるしかありませんが、可能な限り早急な治療が必要です。発症から1分ごとに7~10%救命率は下がり、10分以上経過するとほとんど命は助かりません。近年、運動場、劇場や役所などの公共施設に、AED(自動体外式除細動器)が設置されているのはご存知の方も多いかと思いますが、植込み型除細動器(ICD)はAEDと同様の機能を持った機械で、ひとたび命に関わる危険な不整脈が出現したときは自動的に電気ショックをかけて、不整脈を止めるものです。

 

植込み型除細動器が必要な主な病気

 心室細動

 心室が不規則に興奮し、全く血液を拍出できない。そのため早急に除細動しなければ命に関わる。

 

正常心拍

心室細動

 

  

心室頻拍

 心室内で電気信号が規則的に電気回路を回っているか、ある一点から電気信号が出ている状態。血圧が保たれている場合もあるが、極端に脈拍が速い場合は、心室細動と同様、血液を拍出できないため生命に危険を及ぼす場合がある。

心室頻拍

 

 

 突然死の原因となる不整脈に対しての植込み型除細動器(ICD)は、これまで経静脈的に植込みしておりました。

 

 

植込み型除細動器(ICD)の段階的治療

<ペーシング治療>

 ペースメーカの機能を利用して心室頻拍を治療します。

 

 

<除細動治療>

 最大のエネルギーによる電気ショック治療。電気ショックが出ると、急に叩かれたような痛みがありますが、失神などにより治療自体に気が付かない場合があります。

 

 

 皮下植込み型除細動器(Subcutaneous Implantable Cardioverter Defibrillator:S-ICD)は、血管内にリードを入れず、前胸部の皮下に除細動リードを植込むシステムです。そのため、経静脈的ICDで問題となっていたデバイス感染症、またリード抜去時のリスクが減少するとともに、リード断線も起こりにくくなることが期待されています。また、デバイス本体は、いまだサイズが大きいですが、腋窩(脇の下)に植込まれますので目立ちにくくなり、患者さまの印象は良いとのことです。

 

図)2017 Boston Scientific Corporation. All rights reserved.

 

 

3)心臓再同期療法(CRT)

 心臓の収縮が何らかの原因で障害され、程度が強くなると、心臓から全身に拍出される血液の量が少なくなります。そうすると、息切れ、倦怠感、呼吸苦などの心不全症状が出現します。心臓が拡大し、心臓の収縮にズレが生じることがあります。心機能が低下しているうえにさらに収縮にズレが生じることでポンプとしての効率が悪くなり、心不全が悪化します。その収縮のズレを補正するために、心室を両方から刺激することで、心機能が悪いながらも効率よく収縮させるためのペースメーカです。

正常な心臓の収縮

 心室が均等に収縮し、効率よく血液を全身に拍出します。

 

心機能が低下した心臓

 全体的に心臓の収縮が低下し、心臓の収縮にズレが生じると、ポンプとしての機能が更に低下する。

 

心室の両方からペーシングした心臓

 心臓の収縮のズレを補正するため、心室を挟むようにリードを挿入する。同時に心臓を刺激することで、ズレを補正し、弱った心臓のポンプ機能を効率よくする。

 

 心機能が著明に低下している患者さまは、命に関わる不整脈も出やすいため、除細動機能(植込み型除細動器のパンフレット参照)を合わせもったものを使用する場合がほとんどです。本体の大きさもほぼ同じです。

 

 

6.経静脈電極抜去術(レーザーシースを用いるもの)によるリード抜去

 ペースメーカ等の不整脈デバイス治療の手術件数は全国で年間6万件以上が行われており、デバイス治療に関連した合併症も散見され、特に感染を合併した際にはリードを含めたすべての異物除去が必須であることは広く認知されています。デバイス感染が起きると敗血症や感染性心内膜炎などを起こす恐れもあるため、リードを抜き取る必要があります。リードは植え込まれている年数が長い場合は、静脈や心臓の壁に癒着を起こし牽引しても抜けない状態になります。過度の牽引は血管損傷や穿孔といった致死的な合併症を引き起こす可能性が高く、開胸手術による摘出が行われていました。

 エキシマレーザーシースによるリード抜去(図)は、1997年FDAに認可されて以来、欧米にて急速に普及し高い成功率と安全性が報告されており、我が国においても2008年厚生労働省の認可を受け施行可能となり、施設基準を満たした施設で、2010年より保険適用となりました。

 当院でも、平成28年6月9日より、経静脈電極抜去術(レーザーシースを用いるもの)によるリード抜去を開始しました。

 

 

 

7.経皮的カテーテル大動脈弁置換術・形成術(TAVI・BAV)

 「大動脈弁狭窄症」は大動脈弁の開きが悪くなり、血液の流れが妨げられてしまう病気です。65歳以上の大動脈弁狭窄症の罹患率は2~3%と推定され、65~100万人の潜在患者さまがいると推測されます。その原因は、加齢に伴う石灰(カルシウム)の堆積によって発症することが多いといわれています。

 胸痛、失神、心不全などの症状出現後、急速に進行する病気で、重度大動脈弁狭窄症の5年生存率は、胃癌、肺癌などの疾患と同程度であり、症状が発現した後の生命予後は極めて悪い病気です。その治療の第一選択は外科的人工弁置換術で、全身麻酔管理のもとで、開胸、開心術をおこない、人工弁に置き換えるものです。

 しかし、高齢などで体力が低下している方、他の疾患などのリスクを抱えている方にはハードルが高く、重度の大動脈弁狭窄症の方のうち、少なくとも40-70% の方は、外科的人工弁置換術を受けることができていない状況です。そこで2013年10月から国内でTAVI (TransCatheter Aortic Valve Implantation):経カテーテル的大動脈弁置換術という新しい治療法がはじまりましたが、鹿児島では行うことができず、鹿児島の患者さまを福岡、熊本に紹介し、治療してもらう日々が続きました。

 そして2017年6月にようやく鹿児島医療センターで、鹿児島で初めてのTAVIを始めることができました。その特徴は、カテーテルを使用し、開胸することなく、心臓を止めることなく、低侵襲的に心臓に人工弁を留置する方法です。従来の外科手術と比較し、人工心肺を使用しなくて済むことから、身体への負担が少なく、高齢で体力が低下している方や他の疾患リスクを有する方などが対象となりますが、入院期間も短くなることも期待されております。一方、合併症が生じた場合、重篤な状態となる可能性が高く、その治療を選択するにあたっては、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、心エコー医、臨床工学技士、放射線科技師、生理検査技師、各部門の専門看護師が協力して治療にあたる「ハートチーム」を結成し、診療科の垣根を越えて、それぞれの専門分野の知識や経験を駆使し、患者さまに一番良い治療法を選択し、術後管理までそのすべてのプロセスを「ハートチーム」で行っていきます。今後、鹿児島において大動脈弁狭窄症でお困りの多くの患者さまの治療に役立つことを期待しております。

 

 当院でも、ハートチームを立ち上げ、H29.6.29より経皮的カテーテル大動脈弁置換術・形成術(TAVI・BAV)を開始しました。

 これからも中央でできる治療を、鹿児島でもいち早く行うことができるよう精進したいと思いますので、よろしくお願いします。