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リードレスペースメーカに房室同期ペーシング機能が新たに搭載されました

 2017年9月に本邦において、リードレスペースメーカ植込み(Micra)が保険償還され、当院においても2017年9月14日に第1例目を開始し、20217月で200件を達成しました。
 リードレスペースメーカは、大腿静脈からアプローチし、わずか容積0.8cc/重さ1.75gのデバイスのみを右室内に挿入するペースメーカです。これまで心室ペーシング(VVI/VVIR)設定のみに限定されるペーシングモードでしたが、Micra AV202111月より使用できるようになり、安静時の房室同期が可能となりました。植込み手技における手順に違いはありません。

 Micra AVは加速度センサーによる心房機械的センシングで得られた情報をもとに房室同期ペーシングを実現します。デバイスにはペーシングする電極とコンピュータ、電池がすべて組み込まれており、予測電池寿命は約813年で、1.5/3テスラ全身MRI対応しています。

 これまで通り、Micraの留置には専用の23Frの太い血管造影用シースを挿入する必要があり、大腿静脈に関連した血腫や血管損傷、心タンポナーデなどの合併症があり、三尖弁損傷やペースメーカ脱落など、従来の経静脈ペースメーカにはなかった様々な問題もあります。リードがないこととジェネレータを皮下に植込む必要がないことから、近年増加傾向にあるデバイス感染が少ないとされていますが、必ずしも合併症はゼロにはならず、異物を身体の中に留置しますので注意が必要です。

 これまで、リードレスペースメーカ植込み適応は、VVI型ペーシングに適した患者のうち、下記の疾患を持つものとされていました。

  1. 心房細動を併発した症候性の発作性または慢性の高度房室ブロック

  2. 心房細動を併発しない症候性の発作性または慢性の高度房室ブロックを有し、心房へのリード留置が困難またはハイリスクあるいは効果的と認められない場合

  3. 症候性の徐脈頻脈症候群または洞機能不全症候群で、心房へのリード留置が困難またはハイリスクあるいは効果的と認められない場合


 ペースメーカ植込みが必要な患者さん全てに適応があるわけではありませんが、房室同期ペーシング機能が新たに加わり、適応範囲が広がったと思います。
 経静脈ペースメーカでのリード抜去後や残存リードの存在、リード留置可能なアクセスルートがない、胸部の皮下組織がない、ペースメーカ感染等のリスクの可能性が高いなどでお困りの患者さんがおられましたらご相談ください。


(文責:鹿児島医療センター 循環器内科部長 薗田正浩)

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