独立行政法人 国立病院機構 鹿児島医療センター

心原性ショックとは? 補助循環用ポンプカテーテル(Impella®)導入

 当院は鹿児島県の循環器診療の中心的な役割を担っており、重症や多くの疾患を有する患者さまに標準治療のみならず高度で複雑な治療を中央に遅れることなく、鹿児島の患者さまに安心安全に提供する責務を担っております。

 特に急性心筋梗塞や不安定狭心症、致死性不整脈、重症心臓弁膜症、劇症型心筋炎、重症の急性心不全は迅速に集学的な治療が必要であります。当院では24時間、365日循環器医師が常駐しており、そのような病院は、鹿児島県には少なく、救急患者の受け入れのみならず、適切な治療を可能なかぎり迅速に施行し、救える命、救わねばならない命を落とさないよう体制づくりをおこなっています。

 

 心原性ショックとは先述しました急性心筋梗塞や不安定狭心症、致死性不整脈、重症心臓弁膜症、劇症型心筋炎、重症の急性心不全のため、急速に循環不全に至り死亡に至る可能性が高い状態で、現状でも死亡率が高い病態で、特に心筋梗塞に伴う心原性ショックでは40~50%に至ります。このような救急患者さんは病院で受け入れただけでは問題は解決せず、病態の把握、診断、治療には非常に難渋するため、冠動脈医、不整脈医、弁膜症医、心不全医、超音波医、心臓外科医、麻酔科医、そして多職種のコメディカル等のエキスパートから構成されたハートチームで治療にあたる必要があります。

 

 心原性ショックには機械的補助循環デバイスを用いた集学的な治療が必要となることが多く、従来は大動脈内バルーンパンピング(IABP)および体外式膜型人工肺(PCPS/VA-ECMO)が一般的でありましたが、日本では2016年より補助循環用ポンプカテーテル(Impella®)が承認されました。補助循環用ポンプカテーテル(Impella®)は経皮的または経管的に左心室にピッグテイル型のカテーテル挿入し、循環補助・左室補助を行う心内留置型のポンプカテーテルです。ポンプカテーテルに封入されたインペラと呼ばれる羽根車が回転することにより、左心室内にある吸入部から血液を脱血し、カニューレを経て吐血部から上行大動脈内に順行性に送血します。(図①)従来のデバイスと比較し、生理的に血行動態のサポートができることより、循環不全からの脱却に多くの期待が寄せられています。本邦への導入以後多くの知見が得られ、急性心筋梗塞では従来発症からバルーンやステントを用いて冠動脈拡張までの時間を少しでも短縮することが一番重要とされてきましたが、心原性ショックをきたした急性心筋梗塞では、バルーンやステントでの拡張までの時間短縮よりも、補助循環用ポンプカテーテル(Impella®)を用いて、まずは循環動態を安定させることがより重要となってきました。当院でも20224月に機器導入開始し、20237月までに11例の患者さまに使用し、今後、より多くの患者を受け入れ、精度の高い集学的な治療をおこないたいと考えております。このような治療を遂行するためには、ハートチームの存在は不可欠で、チーム一丸となって一歩一歩治療を実践して参ります。

 そして当院は1981年建造の古い建物、施設ではありますが、多くの紹介病院・関連病院・救急機関との連携がより重要であると考えております。より一層の病院機能の改善をめざし、日々精進して参りますので、どうぞよろしくお願い致します。

(文責:第一循環器内科部長 片岡 哲郎)

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